Wednesday, April 2, 2008

緑なす木の下に来たりて


奥越後平標山の笹穴沢 沢登り伝 (English summary below)

零時:山田の忠実なる下僕のスバルに乗って川古温泉に到着、天幕をはる。群馬アルペンクラブの大林ら四人はすでに来ており、予定通り深夜のコンパを開催。

朝5:00:起床、いささか二日酔いぎみ。一時間くらい林道を歩いたところで、笹穴沢の出会いから沢登りを開始する。男性のメンバーは沢登り靴を履いているが、伝統派のクリッフ足袋式の靴にわらじをつける。台風が最近通過したものの、水量は少なく、最初は思ったより快調に進む。8:30ごろ、壮大な城のように見える岩の下で、最初の高い滝の前に出る。ザイルを結んで、高さ30Mぐらいの壁を登る。


次の大滝は他の皆はザイルを結んで、またはフリーで直登するが、僕だけは滝を避けようと思って、草の生えた岸壁を登って見たが、かえって滝より岩が不安定で、もろいところに出てしまう。ブッシュを握りしめ、ぎりぎりのとこるで突破する。沢登りの魅力はルートを探し求めることにあるが、ルートを完全に間違うことにもそれなれに意味深い教訓があるかもしれない。というのは、心細さなどで目の前の難所を避けてしまいがちであるが、必ずあとでもっと危険なところに陥るのが常である。

14:00:神様がことのほか美しく彫刻したか思えない長さ300Mのスラッブを突破し、少しクマザサのやぶをかき分けて、平標山の頂上の近くに出る。大林のパックから美味しいワインがいつの間にか現れて、皆で乾杯する。

15:00:下山を始める。石南花とブナの間に縫うように走るやせ尾根の道を駆け降りながら、ススキと浮かんできた雲の涼しさに初秋の気配を感じる。眼下には原生林が広がる。日本の緑豊かな山の森林とは違って、イギリスでは 原生林は今ではほとんど文学の中でしか生き残っていない。これからもより多くの人が沢登りで日本の原生林と親しめれば、最高だと思う。姿を消してしまったイギリスの原生林を悼んだかの有名な詩人の言葉を借りれれば、

「緑なす木の下に来たりて友に臥し
鳥の音に声を合わせ
面白く歌うたはん人よ。
来、ここへ、来、ここへ、来!」

− お気にめすまま (坪内訳)


English summary

The usual suspects climb Sasa-ana-zawa on Tairappyo-yama, a mountain in the Oku-Echigo region of Japan. Starting point is Kawafuru-onsen, a remote hot spring village. Highlight: a 300-metre stretch of water-smoothed slabs. The author attempts to avoid a daunting-looking waterfall only to find himself strung out on steep and slippery grass. Philosophical reflection: try to avoid the crux pitch and you’ll only find yourself in a worse mess. All ends happily, though, and on the summit, a bottle of wine, miraculously spared from the previous night’s “kompa”, appears from the leader’s pack. The Top Bard is invoked.

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